〈写楽 閉じた国の幻〉島田荘司

実はこの作品は、雑誌に連載していたときに読んでいたのだけれど、中途半端なところで終わったように感じたので、改めて読んでみることに。。。

息子を回転ドアの事故で亡くした佐藤は、絶望に陥りながらも、大阪市立中央図書館で発見された肉筆画を調査する。
その画は、江戸時代のもので、ある特徴を兼ね備えていた。
画には他に欧文が書かれていて、その欧文が示す謎から、佐藤は次第に写楽の影を見出していくのだが。。。

江戸時代に浮世絵師として10ヵ月間だけ活躍して、その後、消息を絶った写楽。
この、日本美術史上最大の謎である写楽が誰であるかということを、島田荘司らしい視点から解き明かしていく本書は、とにかく前代未聞の写楽の正体におおっとなります。
この写楽像は、おそらくは誰も考えなかったんじゃないかと思うほど奇抜です。
でも、この驚きの正体はただ単に当てずっぽうではなくて、ちゃんと資料によって裏付けられて、それプラス著者得意の奇想天外な推理を駆使して導き出されたもののようなので、妙な説得力があります。
後半部分の絶対にありえないと思われた写楽候補に、次から次へと可能性が出てくるところは圧巻。
読んでいる私も、登場人物たち同様に、ヤッターと思わず小躍りしたいくらい興奮してしまった。
もしかしたら、島田荘司説はありえるのではないか、正しいのではないかと思ってしまったほど。
ただ、現代と並行して江戸時代が描かれる場面があるのですが、そこのところ、とくにラストの江戸編が茶番じみた話になってしまったように思えた。
ここの部分は書かなくともよかったのではないかと。。。
でも、じつはこの江戸編に書かれた内容は、長年、私の母が不思議に思っていたことが見事に解明されたというものでもあったので、これはこれでよかったのかも、と思ったりもした。
その母の不思議だったこととは、山形にいた母が子供の頃に年に一回、「六夜様」といって、寒い季節の真夜中に起こされて、月に向かって家族みんなと、隣近所の家族らで拝んだという記憶があって、それは一体なんだったのかというもの。
これは江戸で盛んに行われていた「二十六夜待ち」という風習で、阿弥陀如来、観世音菩薩、勢至菩薩のご三尊が、月の舟の上で一堂に会するところを、願かけると、その一年間は必ず大きなご利益があるということで、それを拝むために江戸の人々は真夜中まで騒ぎ立てて起きていたらしい。
越前、越後の方では「六夜様」と呼ばれていると記述があるので、隣の羽前にいた母が子供の頃に行っていたことはおそらくはこれだろうと思う。
しかし、江戸時代の風習が母の子供の頃まで残っていたとは、山形ってところは。。。(笑)
裏ではそういった諸々のことまで解明され(笑)、御手洗シリーズではないにもかかわらず、なかなかの力作で、しかも知的コーフンが堪能できる、なかなかの面白本。
結局、肉筆がはなんだったのかとか、いろいろと難点はあるけれど、星四つはこういった誰もが考えなかった発想に、ということで。。。

新潮社 2010年6月発行 ★★★★

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51t-Scg-8KL._SL75_.jpg写楽 閉じた国の幻
読了日:10月03日 著者:島田荘司



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Secre

No title

写楽、この謎の画家を解きあかす本はいろんなのが出ていますね
十ヶ月っていう短い間でここまで魅力を持った画家ってすごいです

No title

10か月間だけ活動というのも勿体無い気がするので、やはり特殊な事情があったのでしょう。この本はそこのところを難なくクリアしているので、なかなか本当の説っぽい感じです。

No title

欧文と言うことは西洋人だった・・?これはまた奇想天外。

人気役者のブロマイド的な絵を出していて、その画面の隅っこにオマケみたいに出てる売れない役者が写楽の正体。と言う説を、以前某テレビ番組でやってました。
まるでうっかり八兵衛みたいだと思ったのを憶えてます。

No title

欧文の書かれた肉筆画が大阪の図書館から発見されたのは事実のようなので、とはいっても、その欧文が書かれた肉筆画は、この小説ではあまり関係がないのですけれど。。。写楽の一連の画は、かなり豪華な刷りなので、ぱっと出の新人ではないのではというのも、この小説の落としどころのようです。

No title

読みたいと思って、予約しようとしたら、200人近く並んでいました。がっかり。
仕方がないので、やはり古い著作から読んでいきます(笑)

No title

うちの図書館は30人待ちなのに、本が6冊も入っています。普通はこのくらいの待ち人数なら、1、2冊なのに。。。この本に対する図書館の力の入れ具合でしょうか。。。?

No title

藤中さんも山形のご出身なのですか?それともお母様だけ?
お母様の長年の疑問が解明されて良かったですね☆ポチ!
ところで、写楽の正体、読んでみたいですねぇ(^^)

No title

両親が山形出身なんです。私は神奈川出身ですが。。。
じつは写楽の謎よりも(笑)、長年の謎が解けてびっくりでした。

No title

写楽を題材にしていたから態々図書館で購入して貰い読み始めたが、子供の回線ドアでの事故等を何故に織り込んでしまっているのか全く理解できない。
それでもって後書きでは枚数が足りない等とは。

No title

子供の回転ドアはたしかにちょっと関係なかったかも。でも西洋の真似を日本流にしたというのと、写楽の謎をかけ合わせたかったのかも。。島田荘司はこの謎をしたいがために無理やり創ることがあますから、読者もそれがないと島田荘司を読んだ気分ならないんです(笑)

No title

私も、島田説の写楽に説得力を感じてしまいました。最後の方はわざとあり得ない風を作ったのかもしれませんね。
回転ドアの話は確かにオランダとの繋がりで思いついたのかもしれませんよね。結末がなくて変だったけど(笑)。

No title

ラストのありえないのが、ありえてしまうのは妙に説得力があって、ぐいぐい読めたんですけれど、あれは演出でしたか(笑)
回転ドアは結局、あの女性と結びつけるものだったのかもしれませんね。
プロフィール

藤中

Author:藤中
好きな作家は、
F・ポール・ウィルスン。
他にスティーヴン・キング、ブレイク・クラウチ、ジョージ・R・R・マーティン、伊坂幸太郎、近藤史恵、島田荘司などをよく読んでいます。
たまに映画関連、海外ドラマ関連、KinKi Kids関連の投稿があるので、
気をつけてください。

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