〈天使の歩廊─ある建築家をめぐる物語〉中村弦

幻の廃線跡を探す〈ロスト・トレイン〉がとても好みだったので、第二十回日本ファンタジー大賞にして、デビュー作でもあるこの本に手を出してしまいました。
選考会開始直後に受賞即決と帯に書かれているとおり、ファンタジーでも謎解きのような先の読めない展開で、またしてもワクワク感を体験しました。

時は大正、妻を若くして亡くした天才建築家、笠井泉二の元に、建築学科の同窓生だった矢向丈明が訪ねてきた。
子爵夫人に頼まれた、ちょっと変わった建築依頼を引き受けてくれないかということだった。
その内容とは、亡き夫と共に暮らせる家。
泉二は引きうけるかわりに、夫人に夫との思い出を話すようにいう。
はたして泉二はそういった家を建てることが出来るのか?

こういった話とはべつに、泉二の生まれたときから、造家師を目指すことになった諸々の逸話、そして建築学科に入ったときのことなどが、織りなすように挟みこまれるという展開なので、なかなか凝った話──この小説を書いた著者の意気込みみたいなものをビシバシと感じとりました。
そういったひとつひとつの逸話が、この天才建築家と、その手にかかった家が、あるときはミステリアスで恐ろしげに普通でないことを浮き立たせてくれるので、今まで読んだことのない小説世界へと誘ってくれる(笑)といった印象でした。
読み終えて、なんかすごくいいものを読んだなという感じでしょうか。
ただ、ラストの展開──泉二との仲を誤解して、いきなりピストルを出してという展開は、ちょっと取ってつけたようで、いただけなかったかも。。。
ラストさえ、もっとうまく処理できていたら、★4つだったのに。。。
ここのところはデビュー作という新人の未熟なところなのかも。
でも、デビュー作にしてこの完成度。
中村弦はこれから期待大です。

新潮社 2008年11月発行 ★★★☆


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コメントの投稿

Secre

No title

すごい、藤中さんがここまでベタ褒めもめずらしい?
ファンタジーなんですよね。
いいものを読んだというところがすごく読んでみたい気になりました。
中村弦さん、いろんな方がでてくるなあ

No title

絶賛されるほどいい本なのですね!

気になりました

No title

死んでいる子爵とどうやって暮らすんだろう。のほうに関心が向いてしまいました。
風水の家とか。魔方陣の家とか。設計にミスがあったら、たちまち地域一帯からオバケとか集まって来そうだとか心配したり。

No title

タヌキさん。中村弦は「ロスト・トレイン」が好きで、こちらも読んでみました。ちょっとあの世とこの世の境目のような不思議感覚を味わえる本です。これから注目していこうと思っています。

No title

えこットさん。デビュー作ということで時間をかけて書いた感じです。綿密に凝った構成がファンタジーでいてミステリーみたいで、なかなか楽しめました。

No title

イカダさん。私もどんな家が出来るのかと思いきや。。。なるほどという感じです。でもこういった家を建てられるのは建築家自身が特別な人間でないと出来ないのかも。いや、ほんと不思議な作品でした。

No title

読んで、ものすごく私好みの本だと思い、図書館にあったのを借りてきました。
幻想的で、静謐で、すごく良かったです。
紹介してくれてありがとうございました。
中村弦、これからもチェックしていきます。

No title

好みでしたか。私も好みだったので、よかったです。
中村弦はまだ2冊しか書いていないので、これからの新作をチェックですね。
プロフィール

藤中

Author:藤中
好きな作家は、
F・ポール・ウィルスン。
他にスティーヴン・キング、ブレイク・クラウチ、ジョージ・R・R・マーティン、伊坂幸太郎、近藤史恵、島田荘司などをよく読んでいます。
たまに映画関連、海外ドラマ関連、KinKi Kids関連の投稿があるので、
気をつけてください。

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