〈夕暮れをすぎて〉スティーヴン・キング

正直いって、最近、ネームバリューのある作家の短篇集って、あまりの面白くなさと、つまんなさに苦悶をしながら読む(笑)ほうが多かったんですが、この短篇集はのっけから惹きつけられます。
序文にキングが、売れていなかった頃は書く技術も未熟なのに、アイデアは湯水のごとく浮かんできていたのに対して、いまは書く技術も進歩していてパソコンも高価なものを使っているのにもかかわらず、そういった短篇を書くアイデアが浮かばくなったと嘆き、このままではいけないということで、編集者に頼まれたアンソロジーを組む目的で、他の作家の短篇を数百篇ほど、目を通した結果、昔の勘?が戻ってきたらしいとのことが赤裸々に書かれています。
キングのような大作家になると、普通、こういうことは書かないと思いますが。。。(笑)
でも、その成果が、見事、この短篇集となったようなので、良しという感じでしょうか。

ウィラ
ジンジャーブレッド・ガール
ハ―ヴィーの夢
パーキングエリア
エアロバイク
彼らが残したもの
卒業の午後

とはいっても、本当にぐいぐい読ませたのは、「ウィラ」と「ジンジャーブレッド・ガール」の2篇かも。
「ウィラ」は結婚式に向かう途中の男女が脱線事故に巻き込まれて、他の乗客とともに、何もない場所で助けを待っていると、ふいに女がいなくなって、救助が来るのを気にしながらも、男が捜しに出かけるといったもの。
これはこういうことだとぜんぜん思っていなかったので、不意をつかれた一篇。
キングもこの短篇集の中で、いちばんのお気に入りの一篇らしい。
「ジンジャーブレッド・ガール」は、生まれて間もなくの娘を亡くして、夫との関係もうまくいかなくなった女性が、走ることに執念を見出したが、別荘からの帰り道に、よその車のトランクに入った女性の死体を見たことから、殺した男に監禁されてしまう。
このために走ることに執念を燃やしていたのかと思うほど(笑)、男との追いかけっこが見どころです。
「彼らが残したもの」は9.11のテロ事件の時に犠牲になった、かつて保険会社に勤めていたときの仲間の遺物が、彼の許に届くことから悩まされる。
遺物はどうすれば、彼の許に帰ってこなくなるのかが、この短篇のワザです。

年明け早々にこの短篇集の残りが出るようです。
その前に、図書館予約をとっている「悪霊の島」(あと3番目)で、今年のキングの読み納めとなるかも。

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Secre

No title

『幸運の1ドル金貨』なんぞをまだ読んでいる時代音痴の私です。面白そうなので早速図書館に予約を入れてみたいと思います。情報早いし、読む量もすごいし、何よりも読み切ってしまうという藤中さんには感心する以外ありません。いつも参考にさせてもらっています。

No title

たくさん書けば、湧き出る前に枯渇してしまう。
他の場所から運んで少しでも潤さないと、深い泉もダメになるんでしょうね

No title

これはまた、面白そう!アイデア+円熟に勝る力は無いですもんね。

No title

赤裸々に書かれていますか?
でもなんとなくわかる。
うんうん、おたがい巨匠同士通じるよなぁ~

突っ込んで。。。

No title

そういえば阿刀田高氏も同じこと言ってましたね。
古今東西の作家の悩みなんでしょうか?

No title

tairikuさん。予約した本がつぎからつぎへと来てしまうので、懸命に読んでいるだけですが。初期のキングは短篇が面白かったけれど、最近は長篇のほうが完成度高いです。

No title

タヌキさん。キングは小説を書いていない日は、自分の誕生日とクリスマスくらいだと言っています。それだけ書いていれば、何かしら案が浮かびそうですが。。。(笑)

No title

タバさん。「ウィラ」はちょっとしたドラマ、トワイライトゾーンとかそういったネタにいいかもしれません。「ジンジャーブレッド・ガール」は2時間サスペンスになりそうなストーリーです。

No title

ばっどさん。私の場合は年と共に、書く気力がなくなっているだけで(笑)、アイデアはまだまだあるんです。アイデアだけを入力して書いてくれるソフトってないでしょうか(って、突っ込みになってない?(笑))

No title

びぎRさん。キングの場合は、昔働きながら、その合間に書いていた、クリーニング屋の作業場で、妻のタイプライターを使えばいまも書けるといってます(笑) なので、けっこう、強気かも。。。(笑)

No title

久々のキング記事が来ましたね!!やっぱり藤中=キングってイメージがあったから。短編集かあ。
昔はぎょうさん書いていたけど、最近長編ばっかりだもんね。
短編は珠玉の作品が多いですね。そうまるで僕のことみたい。
アイデアはいくらでも出てくる。さっき風呂はいったとき、髪の毛の色が状況に応じてくるくる変わったり、ストレス感じたら坊主になって喜んだらぶわっと生える女の子の話。この子の髪の毛はひっぱればどんどん伸びます。トイレットペーパーたぐるように幾らでも伸びる。こんな映像スケッチってみたことないでしょう?

No title

そういえば久々のキングでしたね。キングの初期の短篇は凄いものがありました。やはり、貧乏で仕事が忙しくて、その合間に書くだけで幸せという感じだったから、それが読み手にも伝わっていたのかも。

No title

うんうん、序文のあまりに素直な告白に、キングの技を感じましたよ。
私は「ウィラ」と、「パーキングエリア」が面白かったわ。
アメリカ人作家の短編って、エンターテイメントを感じますねえ。

No title

キングは交通事故で瀕死の重傷を負ってから、さらに筆がさえてきたような気もします。頭のいいところでも打ったんでしょうか(笑) 長篇に関しては、あいかわらず長ったらしい印象なんですが。
プロフィール

藤中

Author:藤中
好きな作家は、
F・ポール・ウィルスン。
他にスティーヴン・キング、ブレイク・クラウチ、ジョージ・R・R・マーティン、伊坂幸太郎、近藤史恵、島田荘司などをよく読んでいます。
たまに映画関連、海外ドラマ関連、KinKi Kids関連の投稿があるので、
気をつけてください。

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