〈極北〉マーセル・セロー

私の好きな小説の設定は「酷寒の地」「終末世界」「異世界に迷い込む」もしくは「周りの人間が消失する」なんだけれど、この小説は前のふたつを満たしていて、しかも翻訳が村上春樹さんということで、即図書館予約を取りました。

昔は多国の移民で溢れていたシベリアの極北の街は、いまやメイクピースひとりが住むだけとなった。
どうやら他の地でも、人がいなくなって終末化が進みつつあるようなのだ。
そこにある日、東洋人ピングがやってきたことから、孤独だったメイクピースの毎日が変わっていく。。。

さすが村上春樹氏が訳しただけあって読みやすくて、しかも一気に読めてしまうほど面白いです。
しかもこの小説、最初に読んでいた世界が、31ページ目でがらりと変ってしまうという仕掛けがあって、ここのところ思ってもみなかったことだったので思わず、上手い!と叫びました。
たぶん、村上氏もそう思ったはず。
内容的にはメイクピースが街を出て、外の世界を旅をして、そこで過酷な目に遭いながらも、ある真実を悟る、という話なのだけれど、いろいろと過酷な目に遭うところがリアルで、この先いったいどうなってしまうんだろう、という興味で先へ先へと読ませる力があります。
とくに終盤、3・11を経験しているからか、凄くリアルな感じで、この物語の終末世界の原因って、あまり詳しく語られていないのだけれど、もしかしたらこれなのか、と思ったりした。
この小説は近未来小説なのだけれど、でもいまの人類が終末を迎えるときって、おそらく放射能が原因の割合が高いのかもと、それとなく感じました。
でも村上氏もあとがきで言っているように、あまりこのことについて色々と論じたくないというのには私も賛成。
この小説は、ただ物語の持つ力というのを存分に味わいながら、ずしりとした読後感に浸るというのが正しい読み方なんだと思う。
小説が持つ、面白くて意外性がある、めったにお目にかかれない物語。
村上春樹氏が自ら翻訳しただけのことはある傑作です。

中央公論新社 2012年4月発行 ★★★★

http://ecx.images-amazon.com/images/I/31ApVq0ohpL._SL75_.jpg極北
読了日:07月21日 著者:マーセル・セロー

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Secre

No title

私は小説の設定でも「酷寒の地」は苦手ですね~ でも今の季節ならいいかも(笑)
31ページ目で世界が変わるとはずいぶん序盤ですね。

No title

びぎRさん。さすがの私も酷寒の地はパスしたいので(笑)、小説の設定でないと「酷寒の地」は体験できません。31ページ目という最初で判るところにこの小説の落とし所があるのかもしれません。。。

No title

村上春樹だというのに予約列は20人未満です。読みやすいというのはとても大切な要素ですよね。

No title

めにいさん。作家のポール・セローの次男ということで、ポール・セロー本人から面白いから読んでと薦められたみたいです。終末な設定は一般受けしないのかも。。。(笑)

No title

これおもしろそうですね。
すべての設定を満たしているのはそうそうないのかもしれませんが、ひとつだけでも十分におもしろい。
「酷寒の地」でしたら「南極料理人」「終末世界」でしたら「北斗の拳」。「異世界に迷い込む」でしたらキングの「ランゴリアーズ」。「周りの人間が消失する」でしたらアガサクリスティの「そして誰もいなくなった」。ふとおもいつくとバラバラですね。。
終末世界ネタは「ブラインドネス」のように全世界の人々の眼が見えなくなるブラックジョーク落ちしやすいからあまり扱わないほうがいいですね。村上春樹は羊をめぐる冒険と海辺のカフカぐらいですが、読みやすいだけでは。。文がうまいとは。。ちょっと。。

No title

ノベルさん。翻訳ものって訳す人で印象が変わってしまいますから、その小説の印象を壊さないように訳すのってけっこう大変かも。。。最初の仕掛けもそうだけれど、今までにない展開が上手いと思いました。

No title

こんにちは。マーセル・セローもポール・セローも知らなかった無知の私でも、村上春樹氏の翻訳というのには反応してしまいます。(苦笑)翻訳本まで村上調なので、読みやすい分原作者の色合いが薄くなりがちですが、原書と読み比べでもしない限りそんな事は関係なく読めるのでしょうね。私はもともと翻訳本はあまり得意ではないのですが、それは文章を咀嚼して自分の言葉で置き換えるという作業には、肝心の日本語に堪能であるという資質が大切だと思うからです。翻訳者が作家であれば、その辺りの最低基準はクリアしているので安心して読めますね。31ページ目の仕掛け、気になりますね~。

No title

さにーさん。私もどちらかというと翻訳ものは苦手なほうです。そうなんですよね。さにーさんのおっしゃるとおりです。たまに年間のミステリ上位の作品を読むと、凄く読みづらくて面白くないというのがあって、それだけで、なんでこれが上位の作品なんだろう?と首をかしげたくなるのがありますからね。その点、村上氏の翻訳はたしかに安心です。これで面白くなければ、作品自体が面白くないとわかりますから(笑)

No title

翻訳モノの苦手な所は名前が憶えにくいから、時々、誰が喋ってるのか、コイツ誰だっけ?と分からなくなり物語に入り込みにくくなってしまう点なのですが・・・勝手な想像だけど、終末モノのこの作品は登場人物が絞られてそうでいいですね。

No title

タバさん。それもありますね。とくに似たような名前があると、誰が誰だかわからなくなります。この作品は主人公にインパクトがあるので、誰が誰だかというのはないですが、最初のころの伏線が思い出せなくて、もう一度、読み返して納得しました。

No title

村上春樹さんの翻訳した作品、読んでみたいです。
早速図書館でチェックします^^

No title

Puffさん。村上春樹さんの訳した本は読みやすいので、それだけでもお薦めです。読み手を意識した文章は上手いのひとことです。

No title

すごい小説でした。力強いし、意外性に満ちているし、びっくりです。
でも、こんな状況、私はすぐに死んでしまいますね(笑)。

No title

めにいさん。主人公がタフすぎるので、いい意味で騙されました。。。
私は寒さだけでも、生き残れないですね(笑)
プロフィール

藤中

Author:藤中
好きな作家は、
F・ポール・ウィルスン。
他にスティーヴン・キング、ブレイク・クラウチ、ジョージ・R・R・マーティン、伊坂幸太郎、近藤史恵、島田荘司などをよく読んでいます。
たまに映画関連、海外ドラマ関連、KinKi Kids関連の投稿があるので、
気をつけてください。

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