〈折れた竜骨〉米澤穂信

特殊設定のミステリは数あるけれど、魔術と剣の中世ヨーロッパを舞台にした「謎解き」というのは、案外めずらしいかも。
しかもその書き手が日本人というのは。
米澤穂信はどちらかというと日常ミステリが多いのだけれど、「インシテミル」あたりから、ちょっと一筋縄ではいかない話が見え隠れしてきて、この作家、案外、作風が広いかもと思わせる何かを感じさせて注目だったのだけれど、ついにやってくれました。
1月にして、もう今年のベスト1位になってしまったのではと思うほど、面白い出来。
中世ヨーロッパが舞台ということで、最初はその世界観に慣れるまで大変だったけれど、慣れればあとは一気読みの面白さで読みふけってしまいました。

ブリテン島の東に浮かぶソロン諸島。
その島の領主の娘アミーナは、東方からやってきた騎士ファルク・フィツジョンとその従士ニコラから、領主の命を暗殺騎士が狙っていることを知る。
じつは2人はその暗殺騎士を追って、ここまでやってきたのだ。
が、その忠告もむなしく、その夜に領主は魔術で殺されてしまう。
しかも殺したのは、暗殺騎士本人ではなく、その魔術に蝕まれて操り人形と化した〈走狗(ミニオン)〉だという。
アミーナは、ファルクに父を殺した〈走狗〉を捜してくれと頼むのだが。。。

本人は認識していなくて魔術にかかって殺しをしてしまうという設定なので、いったい誰が殺したのかが、地道な聞き込みと推理によってじわじわと解き明かされるのがいい。
しかも今で言う、鑑識捜査の指紋検出や、血液などのルミノール反応が一種の魔術として扱われているのが面白いし。
密室からの脱出など、それぞれの謎のすべてが現実的に解かれるのではなくて、その世界観に従って解かれるのが絶妙。
犯人もぜんぜん予想もしていない人物で、まさかまさか、えっ~そんなといった感じでした(笑)
地に足の着いた、魔術と剣の世界に個性的なキャラ、しかも、めくるめく展開、そして魅力的な謎解き。
こういう話が読みたかった!
ほんとうに、よくぞ書いてくれたという感じ。
こういった新しいことに果敢に挑む著者には「あっぱれ」のひとことです。

東京創元社 2010年11月発行 ★★★★☆

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51wf07G9zoL._SL75_.jpg折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)
読了日:01月29日 著者:米澤 穂信



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Secre

No title

もう今年一番なんですね
ファンタジーっぽいですが推理ものようであり、ライトノベルっぽくもなさそう
独特の世界な感じも興味がでそうです

No title

ファンタジーの世界に推理で解決を導き出せるのかというのが、この本のテーマです。なので、この世界観に従うということで、魔術だろうが、不死の人間だろうが、その設定を受け入れて、きちんと論理的に解かれているのが面白いです。

No title

前近代の世界で科学捜査の手法が採られる。と言うのが新しい感じがしますね。

もっとも、魔法ありのドラゴンあり悪魔ありだったら、ミステリーに仕立てるのが逆に難しいかも。

きっとこう言う世界が大好きな人が書いたんですね。

No title

ハッキリ言って「剣と竜と魔法の世界」は、嫌いなのですが・・・こういう話が読みたかった!と仰る藤中さん^^の言葉を聞いて、オイラもそう思ってしまうかも?そう思いました。

No title

イカダさん。たしかにこういう世界が好きな人が書いたようです。でも魔術あり、不死者あり、なので、よく考えると、かなり危険なミステリのようでもあります。それが茶番にならずに済んでいるのは、やはり物語る力があるのかもしれません。

No title

タバさん。あえてそういう剣と魔法の世界観の中で、論理的に推理の力で解いてしまう過程に新鮮さを感じました。こういった何が起こるかわからない展開にはワクワクしますね。

No title

ファンタジーな世界でミステリーって緻密な設定が必要そうですね。
「なんでもあり」になると興ざめですから~

しかし凄い★の数ですね~ とりあえず読みたい本に入れておきます。

No title

びぎRさん。中世ヨーロッパの架空の島を舞台ですが、なかなか地に足がついた話なので、推理と魔術といったありえない取り合わせでも、そこのところの加減がいいからか興ざめしないで面白く読めます。星は最近ではたぶん、いちばんついたと思います。

No title

これはこれは高い評価で楽しみですね~~。ただ今46人待ちです。

No title

めにいさん。そちらは並ばなくても借りられるのかと思っていました(笑) 予約を取るときからなんとなく面白そうだと思っていたんですが、大当たりでした。

No title

こんばんは♪
中世ヨーロッパが舞台のミステリー、面白そうですね☆ポチ!
またまた、古本屋で探してみます^^
最近はまってます、古本屋☆ゞ

No title

Puffさん。剣と魔法の中世という世界にしか、成しえないトリックなので、そこのところが考えたものになっています。
古本屋って見ているだけで楽しいですよね。

No title

はじめまして。
インシテミルの記事からこちらにきました。
この本気になります。おもしろそう。

No title

こちらこそ、はじめまして。。。
インシテミルも設定が面白くて好きですけれど、これも負けず劣らず上手い設定で読ませ、なかなか良しでした。

No title

読みました。
ファンタジー読みとしては、クエストの旅に出てくれなかったのが不満です(笑)。

No title

めにいさん。私は孤島ものミステリの気持ちで読んでいたので(笑)、気になりませんでした。。。

No title

初めまして~
今、感想をアップしたら出てきましたよ~
面白かったですね!脱日常感にどっぷりでしたよ~

No title

LIBRAさん。かなり前の記事ですけれど、出てきましたか(笑)
ほんと、脱非日常の意表をついた背景設定がよかったですね。
プロフィール

藤中

Author:藤中
好きな作家は
F・ポール・ウィルスン。
他にスティーヴン・キング、ブレイク・クラウチ、ジョージ・R・R・マーティン、伊坂幸太郎、近藤史恵、島田荘司をよく読んでいます。
たまに映画関連、海外ドラマ関連、KinKi Kids関連の投稿があるので、
気をつけてください。

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