〈獣の奏者 外伝 刹那〉上橋菜穂子

アニメ化されたりと、今ではかなりの知名度になったこのシリーズ。
Ⅰ、Ⅱでは主人公エリンの少女時代を、Ⅲ、Ⅳでは大人時代を描き、堂々の完結となったはずなのに外伝とは、ちょっとうれしいサプライズかも。
なぜか今回の本に限って、うちの図書館の新着欄に、こどもの本ではなく、おとなの本として記載されてありました。
この、うちの図書館のこだわり?は、あとがきを読んだ図書館員さんの配慮でしょうか?

【刹那】
妊娠したエリンが産気づいて破水したが、無理をしたために、母子共に危険な状態となる。
隣の部屋で無事に生まれてくるのを待つエリンの夫イアルは、そもそもこうなったエリンとのなりそめを回想する。。。
じつはイアン視点から描くのが妙に新鮮で、最初、いったい誰の視点かわからず戸惑ってしまった(笑)
本編はエリン視点ばかりだったもので。。。
【秘め事】
カザルム王獣保護場の最高責任者であるエサルの若き日の出来事。
エサルって、誰だっけ?といきなり最初のページの登場人物を確かめてしまったけれど(笑)、なかなか情熱的な話でのめりこむようにして読んでしまった。
こういった立場の女性はひどく共感を覚えてしまうので、思わず感情移入してしまった。
ある一定のムチカが木の皮を食べるのはなぜなのかというのと、それを王獣の治療にというくだりが、なかなか読ませた。
【初めての……】
エリンの息子のジェシとのエピソード。
エリンの親バカぶりが微笑ましいです(笑)

ⅡとⅢの間の11年の空白を埋めるべく書かれた外伝ということで、Ⅲでいきなり子持ちになってしまったエリンとイアルの馴れ初めがわかって興味深かったです。
Ⅳで出てくる、もともと住んでいた家を売らずに残したエピソードも興味深かったし。
短篇だからといって手を抜くのではなく、むしろ密度が濃い感じです。
登場人物のひとりひとりが著者のなかで生きているからなんでしょうね。
とにかく読み手を読ませる筆力というのが半端ではない。
キャラたちにこめられた想いというのがほとばしるようなこの作品集。
まだまだ書き足りないような、ただならぬパワーを感じました。

講談社 2010年9月発行 ★★★★

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51vWe1WmwuL._SL75_.jpg獣の奏者 外伝 刹那
読了日:11月05日 著者:上橋菜穂子




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Secre

No title

まったく読んだことはありませんしかし、家をなぜ売らなかったかとか、主人公を子持ちにするとかすごいなあ。私なら主人公、子持ちの発想はないかな。まあなるべくして、なっちゃったんでしょうけど。アニメにもなったんだしおもしろいんだろうなあって思いました

No title

子供時代から大人時代まで描くのって、やはり作者の経験も踏まえたものから滲み出てくると思うので、もしかしたら年代が上がるほど、いいものが書けるのかもしれません。そういった面では、上橋菜穂子さんはいい歳のとり方をなさっているな、と感じます。私もそうありたいです。

No title

すくなくともタイトルだけ追って読むと、まぎれもなく大人の本っぽいですね。


物語を長くすると言うことは、結局少年少女が子持ちの父や母になると言うことなのかも。ですね。

No title

刹那ですからね。大人なタイトルですよね(笑) 少女が苦難を乗り越えて大人になる過程というのは、ひとつのドラマですからね。大河小説のおもむきって感じでしょうか。

No title

面白そうな作品ですね^^メモメモ。
図書館員さんの嗜好とか好みは置いてある本にかなり影響しているような気がします。好みが合わないと最悪です(^^;
ポチ☆

No title

図書館員さんの嗜好。。。たしかにそれはあるかもしれません。村上春樹の本が1週間後に入るのに、凄くマニアックな作家の本が発売すぐに置かれてあるときがありますから。。。(笑)

No title

コース料理の特別デザートのような美味しい本でしたね。
ⅡとⅢの間がずいぶん離れていたので戸惑ったのですが、すぐについていけたのは、著者が彼女の人生をしっかり追いかけていたからなんですよね。

No title

こういった感じのデザートなら、もっと欲しいところですが、ほどほどがいいんでしょうね。
著者の頭のなかではⅡ、Ⅲの間に描かれていなかったことも、きちんと順番に描かれているんだな、と感じました。

No title

他にも魅力的な人物がいるから外伝はまだまだ書けそうですよね。ジョウンとかユーヤンとかダミヤ(笑)とか。

No title

> びぎRさん
4年前でも記憶に不安が残る外伝です(笑) たぶん読んだ当時は印象に残る話だったんでしょうが。。。
プロフィール

藤中

Author:藤中
好きな作家は、
F・ポール・ウィルスン。
他にスティーヴン・キング、ブレイク・クラウチ、ジョージ・R・R・マーティン、伊坂幸太郎、近藤史恵、島田荘司などをよく読んでいます。
たまに映画関連、海外ドラマ関連、KinKi Kids関連の投稿があるので、
気をつけてください。

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