〈雀蜂─スズメバチ〉貴志祐介

「悪の教典」で、何かをぶち抜けてしまったかのような著者だけれど(笑)、ホラー文庫での新作はホラーの王道のような作品です。
「鳥」とか「狂犬」とかのパニックものはあったけれど、意外と雀蜂はなかったかも。。。

雪山の山荘のベッドルームで目覚めた小説家の安斎は、妻を捜しに出た廊下でふいに異様なことに気づく。
こともあろうか辺りをスズメバチが飛び回っているのだ。
実は安斎は一度、スズメバチに刺されていて、今度、刺されるとアレルギーを起こして死に至る可能性がある。
安斎は助けを求めようと連絡しようとするが、通信機器は使えず役に立たない。
しかも車で逃げようにも鍵がないのだ。
もしかしたら先程まで一緒だった妻が企んだことなのか?
安斎は妻に恨まれることになったことを思い起こしつつも、スズメバチ相手に孤軍奮闘するはめになるのだが。。。

いたって単純な話なので、サクサク読めてそこが物足りない気もしたんですが、とにかく驚愕の真実、ラスト25ページのどんでん返し(裏背のあらすじに記述)に向かって読んでみました。
なるほど、たしかにホラーの王道話だと思っていただけに、この展開は予想外かも。
銭湯から、自宅に檜風呂云々の記述はあれ?と引っかかっていたけれど、まさかこうくるとは思わなかった。
でも個人的には、こうきても、どうでもいい感じなことも否定できない(笑)
あまり骨の無い話だから余計そう感じるのかもしれないけれど。。。

角川ホラー文庫 2013年10月発行 ★★★
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〈悪の教典上・下〉貴志祐介

タイトルからして穏やかでないですけれど、それよりも図書館で手渡された上下巻の分厚さにビビってしまいました(笑)
さすがに雑誌に2年間連載していただけあります。
分厚い本を読むときは、何よりも持ち運びが大変だし、手が疲れて困ります(仕事中に読むなって(笑))

町田市にある高校の2年4組の担任、蓮見聖司は、その人柄から生徒に人気があり、教頭や他の先生からも、頼られ、慕われている。
けれども蓮見は子供の頃からIQは高いが、人としての感情が欠如していた。
あるとき、何かに付けて、文句を言いに来る清田梨奈の父親が邪魔になり始めてくる。。。

外面は良くて、内面は実は、というノリですね。
蓮見の住まいの隣の大家の家で飼っている犬がいつもは人が寄っても穏やかなのに、蓮見が寄ると吼えるという描写から、なんとなく主人公の内面を感じ取れる出だしはなかなかいいです。
しかし最初は、正義のために悪事を働く必殺仕事人のようなタイプな人だと思っていたので、下巻から鬼畜な人への変貌はちょっとなと思ってしまった。
なぜかというと、上巻ではIQが高いからか、知的な殺し方?だったのに、下巻からはひとつの犯行がバレそうになって、その場の思いつきで殺すという、何やらミステリーによくあるマヌケな人になってしまった気がしたので。。。
怜花たちが逃げようとした非難用救助袋のトリック?はバレバレなのに遺体を確かめないとか、しかも4階の生徒の遺体に紛れていたのに、気づかなかったとか。
それでも面白いことには変わりがないんですが、もうちょっと殺しに知的さ(?)があると、もっと展開が楽しめたかも。
私としては、教師や生徒などを殺すというつまらないことをやってないで(笑)、アメリカの証券会社のCEOの命を、その高いIQを駆使して狙ってほしかったような気がする。
おそらくそれは、この続篇か何かで書こうとしているのかもしれないけれど。

文藝春秋 2010年7月発行 ★★★☆

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51OhbIpwU2L._SL75_.jpg 悪の教典 上
読了日:09月24日 著者:貴志 祐介



http://ecx.images-amazon.com/images/I/51WMaQhn%2B5L._SL75_.jpg悪の教典 下
読了日:09月日 著者:貴志 祐介



読書メーター

〈祭りの夜、川の向こう〉吉来駿作

著者は「キタイ」でホラーサスペンス大賞を受賞したらしい。
「キタイ」というのはグイン・サーガに出てくるあやしげな都市の名前と同じで、当時、気になっていたけれど、進んで読んでみようとは思わなかった(笑)
この本は図書館の新着でタイトルに惹かれ、しかも誰も予約していないので読んでみることとなりました。

寝たきりの祖父が痴呆で凶暴の一途を辿り、寺島家はみな疲れ果てていた。
高校生の航太も例に洩れず、いつしか祖父の死を願うようになる。
一方、航太の同級生の、きらりは母親の妊娠を機に、義父からストーカー行為をされ、悩まされていた。
きらりは、そのうち義父に襲われるといい、そのまえに義父を殺してくれと航太に頼む。
それぞれの死を願う、ふたり。
やがてそのことが、惨劇を引き起こす。

新人さんの割にはなかなか読みやすくて、ホラーをこよなく愛しているな、というのが伝わってくる作品です。
ホラー映画での幽霊はなぜ洋服を着ているのか──服は肉体と共に朽ちはてるので、絶対に幽霊にならないので、幽霊が服を着ているのはおかしい、という突っ込みに、たしかにとか思ってしまいました。
あと、物語のなかで、その土地では盆踊りの日に、たまに死者が生き返って踊っているというところで、それなら死んだ犬も踊っているのかという突っ込みには爆笑。
あと、女性の幽霊は、Tバックの裸にも、にんまりです(笑)
真面目なホラー?なんですけれど、ところどころにお笑い要素が入っていて、やけになごみます(笑)
ホラーな仕掛けをお笑いに変える著者のセンスは案外、好きかも。
残念ながら6月発売なのに私の後ろには誰も予約が並んでいません。
だけどそのうちガツンと面白いことをやってくれて、ブレイクしそうな気もします。
でも、この路線を書いているかぎりはダメかもしれないけれど。。。(笑)

幻冬舎 2010年6月発行 ★★★☆


〈鉄塔 武蔵野線〉銀林みのる

武蔵野線といっても、電車ではなくて鉄塔の線です。
最初このタイトルを見たとき、勝手にテツの話だと思っていたのですが(笑)、どうも鉄塔の話のようで。。。
が、しかし。
武蔵野線の1~80までの鉄塔の写真付きの話ということで、とてつもなくマニアックな匂いを感じ取り(笑)、妙な興味を持ちました。

5年生の見晴は、あと少しで転校してこの地を離れることになる。
荷物の整理をしたりしている夏休みに、ふと近所に建っていた鉄塔に魅せられてしまう。
その鉄塔は『武蔵野線75-1』と書いてあり、辿っていくと『80』で終わっていた。
反対側をたどっていけば、『1』があり、そして秘密の原子力発電所に行きあたるはずだ。
見晴は2歳年下の友達アキラを誘い、武蔵野線をたどる旅に出る。。。

少年たちが鉄塔を辿って旅に出るということで、キングの〈スタンド・バイ・ミー〉のような感じのノリだけれど、鉄塔の描写がやけに濃くて、最初の10の鉄塔まではなかなか面白かったのだけれど、これが75から遡って1までの鉄塔の描写となると、ちょっと鉄塔に興味のない私には途中からう~んといった感じになってしまった(笑)
鉄塔だけではなくて、もうちょっと何かしらのサイドストーリーを入れてくれると、鉄塔に興味のない人でも楽しめたかもしれないです。
ラストもとってつけたような大人がしゃしゃり出てきてといった感じで、どうもといった感じでした。
どうせなら、少年だけで、達成してほしかったような気もする。
著者はこの作品で第6回ファンタジーノベル大賞を獲ったらしいです。
同時受賞はあの、池上永一氏の〈バガージマヌパナス〉ということで、この年のこの賞にしてはかなりの収穫だったとのこと。
でも、銀林氏はこれ1作かぎりで他に書いてませんけれど。。。
1つのことにあまりにもマニアックだと(笑)、他のことはもう書けないのかもしれません。
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ソフトバンク文庫 2007年9月発行
★★★

〈IN〉桐野夏生

〈OUT〉と対をなすとかの煽り文句が宣伝で躍っているのを目にするけれど、あんまり〈OUT〉のようなノリとは関係ないかもしれませんね。
というか、桐野夏生は、〈OUT〉系のエンタなミステリーからどんどん遠ざかって行ってしまって、独自の道を歩き出した感じです。

小説家の鈴木タマキは、今は亡き、緑川未来男の私小説である「無垢人」のなかの、愛人の『O子』を題材に、「淫」という小説を書こうとしていた。
かくいう、タマキも今は別れたとはいえ、編集者の青司と不倫のなかだったのだ。
そんな自分のことを重ねながらも、書く過程で、愛人の『O子』は誰かと突き止めようとする、タマキ。
そんななか、ある作家から『O子』は同じ作家である三浦弓実だという情報を得る。
はたして真相とは。。。?

私小説といえども、本当にのことを書いているのかいないのか。
もし本当ならば、愛人『O子』とはいったい誰なのか。
ひとりの作家の謎に迫るような、そんな感じのミステリーですね。
この「無垢人」という小説。
誰か忘れてしまったけれど(笑)、ある作家の小説を下地にしているようです。
そういえば、著者はいま、週刊誌連載で、作家の林芙美子を題材にして書いているので、その取材をしている過程でこの作品が生まれたのかな、とも感じました。
読んでいく過程では面白いんですけれど、題材が題材なので、手汗握る展開だとか、ワクワクするとかはないんですけれどね(笑)
私的には〈メタボラ〉とか、いま新聞連載している〈優しいおとな〉のような、少年目線のジャンルはけっこう好きなんですけれど。。。
でも、なんでも?読ませてしまうのは、さすが桐野夏生って感じです。

ここのところ関東で地震が頻発して、グラグラ揺れてビビってしまっています。
今日は静岡でかなり揺れたみたいですけれど、もっとでかいのが来なければいいですが。。。



集英社 2009年5月発行
★★☆
プロフィール

藤中

Author:藤中
好きな作家は
F・ポール・ウィルスン。
他にスティーヴン・キング、ブレイク・クラウチ、ジョージ・R・R・マーティン、伊坂幸太郎、近藤史恵、島田荘司をよく読んでいます。
たまに映画関連、海外ドラマ関連、KinKi Kids関連の投稿があるので、
気をつけてください。

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