〈白昼夢の森の少女〉恒川光太郎

10年間にアンソロジーとか雑誌に寄稿した短篇をまとめたものだそうで、テーマも枚数もバラバラだけれど、なぜか統一感のある恒川光太郎さんの作品郡。
きっと本人にしか書けない世界観が圧倒的だからだと思う。
どれもこれも私の好きな世界なので、こういったのを読むと、また恒川光太郎さんについて行こうと思ってしまう。。。

「古入道きたりて」
川釣りをしに山奥に入った先で大雨に遭い、帰りのバスに遅れたために老婆のいる一軒家に泊まることになった男は。。。
現代だと思っていたら昔の話だったり、老婆が怪しいと思ったら、人畜無害だったりと、読み手に先を読ませない展開が絶妙、なにより異形ものを描かせたら、右にも左にも前にも後ろにも(笑)出ない唯一無二の書き手だと思う。

「焼野原コンティニュー」
終末世界で名前のみで記憶をなくした男が、東京の郊外に逃れて。。。という話だけれど、男の背景の設定がなかなか面白い。
こういった設定で長編が読みたい。。。

「白昼夢の森の少女」
ある日、植物のつたが伸びて街を覆いつくす。
そこに住んでいた少女はつたに体を貫かれて。。。
アイデアがものをいう話で、そのアイデアを発展させていく過程がやっぱ、凄いわ恒川光太郎という感じになる。

「銀の船」
子どものころに思い描いていた空に浮かぶ銀の船。
ある日「条件として、20歳を超えていない人、20万円で乗船できる」という張り紙を見つけ、船に乗り込むのだが。。。
年代を超えた船の旅は永遠でも飽きない感じもしますが。。。

海辺の別荘で
椰子から生まれた女性が最後に辿りついた先で、自身の復讐話を始める。。。
本当なのかウソなのか、これ、どちらともとれるラストが上手い。

オレンジボール
気が付くとボールになっていた中学男子という、凄く設定雑だけれど、恒川光太郎が描くと茶番にならないから不思議。。。

傀儡(くぐつ)の路地
散歩が趣味の男が殺人事件に遭遇し、興味本位に犯人の男を追い住居を突き止める。
後日、郵便受けにメールアドレスを書いた手紙を入れ、殺した理由を訊く。
男はドールジェンヌが指示を出したと書いてきた。
次の日、男がいつものように散歩していると、路地に人形を抱いた少女が現れる。。。
なるほど、こういう話かと唸った。
アイデアがいいよね。。。

平成最後の落とし穴
平成のスピリットという人から電話が来て、平成についての質問を受けるのだが。。。
こ、これは。。。凄いところに落とされた感、半端ない(笑)

布団窟
それほど仲が良くないけれど一緒に遊ぶ仲でもある秋山の家に招かれたときに、布団がいっぱい敷いてある部屋で遊ぶことになったのだが。。。
これが唯一の実話みたいで、恒川光太郎半端ねえ。。。となった(笑)

夕闇地蔵
地蔵の前に捨てられていた、地蔵助は見える世界が普通の人と違って、白黒の濃淡で人の顔は真っ黒、だが目を凝らすと第二の層が見えてきて、人は皆、金色の炎となってみえる。
そんなとき、兄のように面倒を見てくれる冬次郎の秘密を知ってしまう。。。
もはや設定からして半端ない。
これも異形の存在感が揺るぎない話。

短篇集って何篇かは、あまり面白くなくて、なかには首を傾げたくなるほど意味不明なものもおおいけれど、これはすべての話に抜かりがなく読ませてしまう。
恒川光太郎最強短篇集といっても過言ではない出来。
しかも全編、普通じゃない話(笑)
この設定で長編読みたいというものが多いけれど、短篇だからこそ面白いのかもしれない。

2019年4月発行 株式会社KADOKAWA ★★★★
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〈音叉〉髙見澤俊彦

THE ALFEEのたかみーの小説家デビュー作。
ディレクターの瀬川からデビューの条件としてバンド名を変えることを言われた「グッド・スメル」のメンバー、同じ大学生の4人が、当時の世相や女性たちに翻弄されながらも、デビューをするという話。
バンドデビューの話だから、少なからず著者の経験も入っているんだろうなと思いながら、ちょこっと調べてみたら、THE ALFEEって元々、4人でデビューしてたんだと知った。
本書を読むうえで、ここのところがなかなか興味深い。
ただ、ラストの「憂鬱な週末」は要らなかったような気もする。
その後のグループがどうなったかをほんの僅かに知る機会かもしれないけれど。。。
しかもアイドルグループ「レモン・キッズ」って。。。(笑)
こちらは3年で解散したみたいだけれど。。。
でもこの「憂鬱な週末」を入れたことで、この話は1970年代の話だけれど、現代に書かれているから「メチャ」や「マジ」とか書いても許されるのかなと思ってみたりした。
最近読んだ芸能人の小説、加藤シゲアキさんは、どちらかというと、小説としてはけっこう上手い文章力だけれど、文章的には誰にでも書けてそれほど独自の色はない。
たかみーは文体に独特のリズムがあって、見澤俊彦にしか作れない表現でガンガン文章を書いているので、上手いとか下手とかを超えて凄くインパクトがあるんですね。
別にコンテストで勝ち抜いたりする話とかではなく、ただ単にバンドがデビューするだけの話を、これだけの人間の感情と文体を持って描き切っているという、そこのところがたぶん、面白いんだろう。。。

2018年7月発行 株式会社文藝春秋 ★★★☆

〈滅びの園〉恒川光太郎

会社帰りの電車で何気なく途中下車したところは、絵本のような見知らぬ町だった。
鈴上誠一は元の世界に戻ろうとするが、次第にこの町に慣れ親しんでくる。
一方、鈴上誠一がいなくなった世界では、<未知なるもの>が天空に現れ、地上ではプーニーと呼ばれる不定形の異生物が各地にはびこり人類を脅かしていた。。。
最初はかなり狭い世界観でいつもの恒川光太郎らしさが出ていたのだけれど、途中から異生物の侵略ものという色合いを見せ始めてから、スケールでかい展開に。
これ1巻で収拾できるのかと思っていたら、ラスト近くになってバタバタといった具合に一気に片が付いたので、逆にびっくりした(笑)
全体にちょっとゲームな世界観のような気配も漂ってきますが。
ラスト近くの地球が救われる場面は映画の「フィッシュストーリー」を連想させたけれど、もしかして観ていたとか?(笑)
ラスト近くの書き込みが物足りない感じもしたけれど、まずはこの世界観が楽しめる出来かもしれない。

2018年5月発行 株式会社KADOKAWA ★★★

〈ヘブンメーカー スタープレイヤーⅡ〉恒川光太郎

前作がいまいちな感じだったのでもうⅡはいいかなと思っていたのだけれど、前作の続きじゃないということで読んでみることに。。。
まずは神奈川の藤沢市!に住んでいる鐘松孝平がトラックに轢かれて、つぎの瞬間やってきたのは異世界で、そこで戸惑いながらも仲間を作っていくという話と、同じく藤沢市に住んでいる佐伯逸輝がある日、スタープレイヤーに選ばれて異世界にやって来るという話が交互にじわじわと語られる。
スタープレイヤーというのは、前作同様スターボードを使用して十の願いを叶えられる力を与えられる人のこと。
異世界にプチ藤沢市を作ったり(笑)、ついでに鎌倉八幡宮とか大仏なんかも作ったりと、やりたい放題できる。
ま、そこのところがちょっと前作は茶番な感じだったのだけれど、今回はそこのところの茶番をうまい具合に物語に絡め、レビなどの登場人物もよかったので、なかなか地に足のついたストーリーとなったところがよかったかもしれない。
マキオや夕月といった前作の登場人物たちもちらりと出てくるので、そこのところも読みどころ。
そしてこの話は続編ではなくて、じつは**だったということで、もしかしてこの続きが出るとするならば当然、前作の続きということになるので、前作がいまいちだった私ですがちょっと読んでみてもいいかな、という気持ちになりました。

2015年11月発行 株式会社KADOKAWA ★★★☆

〈イルカは笑う〉田中啓文

この本は確か何か雑誌の書評で取り上げられていてそのとき面白そうだな、と思って予約をとった代物のような気がした。
どんな作風なのかわからないままとりあえずページ順の短篇「ガラスの地球を救え!」から読みだして、ああ、なるほどこういう感じなのかと思いながら読んでいく。
あまりのバカバカしさに思わず笑ってしまうのだけれど、なかなかこれが面白い。
なにせ、日本が遺したアトラクションの船長が何者かにとり憑かれ、急遽、アトラクションに乗っていた陰陽師のアベベが除霊すると、手塚治虫の霊が「ガラスの地球を救え」といっていなくなって、そこへ地球外生命の攻撃が始まって。。。という内容。
それを真面目に書いて読み手に読ませるというのはワザとしか思えない(笑)
そのあとの展開もヤマトの波動砲とか、オタクの霊だとか、何もかも最初から最後までが凄すぎて!(笑)
あと「本能寺の大変」
題名だけでも変なのがわかると思うけれど、これが大爆笑。
なにせ、織田信長が。。。(笑)
人間五十。。。と、敦盛のところが最高に笑えた(笑)
このネタで中国大返しもやってしまうのだからもう脱力するしかない(笑)
「屍者の定食」は料理人とゾンビを描いて、そうくるかな結末(笑)
元々のタイトルが「身を尽くし料理帖」というのを知ってなんて絶妙なタイトルなんだと唸る(笑)
「歌姫のくちびる」はジャズホラーだそうで(何のジャンルだよ?)、2人の歌姫の行く末が怖すぎる。。。
表題作の「イルカは笑う」はラストのイルカが笑う真実が、こう来ちゃうのという感じでした。
田中啓文、初読みかと思っていたら、郭公の盤の人だった。。。
あれも確かに変な感じだったような。。。(褒めてる(笑))

2015年9月発行 河出書房新社 ★★★☆
プロフィール

藤中

Author:藤中
好きな作家は
F・ポール・ウィルスン。
他にスティーヴン・キング、ブレイク・クラウチ、ジョージ・R・R・マーティン、伊坂幸太郎、近藤史恵、島田荘司をよく読んでいます。
たまに映画関連、海外ドラマ関連、KinKi Kids関連の投稿があるので、
気をつけてください。

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