〈雲〉エリック・マコーマック

メキシコでの出張の折に突然の雨に降られて入った古書店で乱雑に置かれていたかなり古い本。
中を開いてみると、ダンケアンという、スコットランドの地名が眼に飛び込んできた。
ダンケアンは若い頃に少しだけ滞在したことのある地だった。
しかも黒曜石雲という、19世紀の当時にダンケアンで起きた得体のしれない謎の雲のことが書かれてあった。
興味をひかれたハリーはこの本を買うことにするのだが。。。
突如、町を覆った黒曜石雲の記述が書いてある本の謎を冒頭に持ってきて、そのあとハリーの人生が一から語られるので、この本というかダンケアンという町とハリーの人生がどこで交わってどういう落としどころがあるのか、その興味だけで読み進めていったといっても過言でないかもしれない。
ハリーの人生が語られるうちに徐々にダンケアンとのかかわりやら色々なことが判ってくるけれど、本当に最後までこの本の落としどころがわからなくて。。。
で、その落としどころは、私が勝手に予想していた黒曜石雲のことではなくて、どうやら別のところに行ったかもしれない(笑)
ラストがちょっと、核心からずらされた感じもするけれど、幻想小説の面白さを堪能できました。

2019年12月発行 株式会社東京創元社 ★★★☆

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〈荒野にて〉ウィリー・ヴローティン

私の好きな小説ジャンルのトップに終末世界が君臨しているんですけれど、その下の下あたりに(笑)、ロードムービーものの小説というジャンルも何気にあったりする。
この小説は老いた競走馬を連れた少年が荒野を旅するという、あらすじだけでぐっと来た(笑)
奔放な父親に育てられたチャーリーは母の顔すらも知らない。
ある時父親が恋人と遊びに行って帰ってこなくなったことから、食べるために近くにある競馬場で働くことになるのだが。。。
この手のジャンルは最後はどうなるのか先が読める話ではあるけれど(たまに「テルマ&ルイーズ」みたいなびっくりするような結末が待っているのもあるけれど)、登場人物の境遇や話の過程の目新しさをどう読ませるかが著者の腕の見せ所なので、この小説はその点では成功しているかもしれない。
実は私、文章を読んでいて、先が読めてしまってあまり退屈な文章だと頭に入ってこなくなって、流し読みをする癖があるんだけれど、この小説に限ってはそれがなかった。
こういうところは、やはり著者の力によるものなんだろう。
映画化されるということで、映画もぜひとも観てみたい。

2019年3月発行 株式会社早川書房 ★★★☆

〈死に山〉ドニー・アイカー

タイトルからして不吉な感じが漂っています。
副題に「世界一不気味な遭難事故」「ディアトロフ峠事件」の真相、と書かれているから、もうそれだけでこれは読まないと思って図書館予約をおさえました。
そういった人がたくさんいるのか、この本、いまだに61人も並んでいますが、私が予約を入れたときも10人ほど並んでいたので、ノンフィクションとしてはなかなかのヒットのような気がする。
内容は1959年の冬に、ソ連のウラル山脈に登山に行った大学生の男女9人が遭難したというもの。
荒らされた状態になっていないキャンプのテントから1キロ半も離れたところでほとんどの人の遺体が見つかるが、衣服もろくにつけていなくて靴も履いていない状態で、三人は頭蓋骨骨折、女性は舌を喪失、衣服には高濃度の放射能が検出された状態で見つかったのだ。
いったい全体、どうしてこの9人はキャンプ地のテントから、靴も履かずに出ていったのか。
これはかなり不可解な話で、島田荘司さんあたりが題材にして、とんでもないトリックを使って解決しそうな話ですね。
アメリカ人の著者はロシアに渡って、当時の状況を知る人に話を聞いて(遭難した登山チームの中で途中一人だけ体調不良で戻ってきた人がいた)、そして自分でも遭難したルートを辿ってキャンプのあった場所へと赴きます。
雪崩、少数民族の殺害説や秘密の核実験説、UFO説、武力集団説、凶暴な熊説、などを理論的に否定していって、そして最後に著者が辿りついた結末は。
私がなんとなく考えていた説だったけれど、それに加えて「超〇〇〇〇」は気が付かなかった。
でもたぶんこの事件が起きたということは、こういう解決しかないのかもしれない。
この結末を知ってからのタイトル。
なかなか深いタイトルかもしれない。
ただひとつだけ言いたいことは、マイナス30度のところに登山に行かないで、聞いただけで死にそーになるから。
そうそう。
当時のソ連の最終報告書は「未知の不可抗力によって死亡」とだけ書かれてあったそう。
案外、当たっていたのかも。。。

2018年8月発行 株式会社河出書房新社 ★★★☆

〈洪水の年上・下〉マーガレット・アトウッド

遺伝操作で作られた食用動植物がはびこる近未来で、ひょんなことからそれに異を唱える宗教集団に属することになったトビー。
ウィルスによる伝染病が世界を滅ぼし、気が付けば彼女だけが生き延びていた。
一方、伝染病が各地で流行る中、施設の部屋に鍵をかけられて閉じ込められているレンは残り少ない食糧を気にしつつも何とか生き延びていた。。。
この本、図書館からやってきて初めて気づいたんだけれど「マッドアダム」シリーズ三部作の第二作目だった。
一作目読んでいないじゃん(笑)
またやってしまったという感じだけれど、一つの作品としても読めそうなのでせっかくなので読んでみたんですが、やはりちょっとまずかったかな感が漂います。。。
一つの小説としても読めることは読めるけれど、何かが微妙な感じです。
しかもこの著者「侍女の物語」の人でもあったんですね。
「侍女の物語」海外ドラマにあるんだけれど、ちょっと敷居が高いような気がして観ていなかったりする。
今度、huluに入った時に観てみよう。。。
この小説もそうだけれど、「侍女の物語」もディストピアな世界ということで、ちょっと興味をそそられました。
そっちでハマったら、こちらの小説も改めて最初から読むと良いかもしれない。

2018年9月発行 岩波書店 ★★★

〈ルーム・オブ・ワンダー〉ジュリアン・サンドレル

仕事と十二歳になる息子ルイが生きがいのテルマ。
あるとき、息子が交通事故で植物人間状態になってしまう。
テルマは情緒不安定から仕事をなくし、生きがいを無くしてしまう。
そんなときに息子が書いた死ぬ前にやってみたいことの記述を見つけてしまう。。。
手っ取り早く言うと、息子が死ぬ前にやりたいことをテルマが体験するという話。
テルマは昔、映画「テルマ&ルイーズ」を観て感化されて、息子にルイと名付けてしまうというエピソードがあるんですが、私もこの映画はかなり昔に映画館で観ていて、ラストの衝撃が忘れられない映画となっています。
テルマが最初に息子のやりたいことをするために訪れるのが日本。
この小説はフランスが舞台だけれど、普通に十二歳のころの子供は日本アニメと漫画で育ってるんだな、ということがわかって、やっぱ日本のヲタクカルチャー凄いやとなりました(笑)
日本に行って色々体験するけれど、ウォシュレットとかカラオケとかコスプレとか刺青とか有名なんだろうな(笑)
ガラス張りのホテルって、私は知らないんだけれど、たぶん日本にあるんだろう。
日本人でも知らなくてごめんなさいですけれど(笑)
ラストはなんとなくわかる話だけれど、普通にいかないところに著者が考えに考えたと思わせる何かがあってよかった。
悲劇的な話だけれど、さらっと読めて、さらっと笑えて、といった、たぐいの小説かも。

2018年8月発行 NHK出版 ★★★☆
プロフィール

藤中

Author:藤中
好きな作家は、
F・ポール・ウィルスン。
他にスティーヴン・キング、ブレイク・クラウチ、ジョージ・R・R・マーティン、伊坂幸太郎、近藤史恵、島田荘司などをよく読んでいます。
たまに映画関連、海外ドラマ関連、KinKi Kids関連の投稿があるので、
気をつけてください。

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